三十路だけど公務員辞めてきた。

30歳にして市役所を退職した元公務員のブログ。主に役所の裏側や退職について。

ツイッターで話題の『宅建試験のサイコパス』に、実は1人だけ善人がいます。

平成30年度の宅建試験の内容がサイコパス?

 お久しぶりのブログ更新です。先週の21日(日)は『宅地建物取引士』試験や『情報処理技術者』試験が開催されていたようで、正に試験の秋でした。
 私は宅地建物取引士試験(以下、宅建試験)を受験してきたのですが、勉強に集中するため、しばらくの間ブログはお休みしていました。
www.taishoku-koumuin.com

 いざ、勉強に集中してみようとすると、そもそも勉強を持続する体力が続かないです。何度も肩が痛くなって、思うように学習が進みませんでした。高校時代の頃と同じ気分で勉強に臨むと、自分の脳力と体力の衰えに愕然とします。昨日まで、試験が終わっても丸一日殆どやる気が起きませんでした。きっつー。

 この勉強法も役に立たない・・・。少なくとも体力の落ちた今では無理でした。
www.taishoku-koumuin.com
 自己採点してみたら、これはたぶん落ちてますね・・・。あと7、8点足りない。

 そして何やらこの宅建試験の問題にサイコパスがいた? ということでツイッターで話題になっていました。


 字面だけ見るとなかなか凄そうです。これらの問題が一体どういう問題だったのか、試験を受けてない人や「そもそも宅建て何や?」という方にも出来るだけ分かりやすく解説していきます。

宅建試験とは?

 毎年10月の第3日曜日に行われる『宅地建物取引士』になるための試験です。宅地建物取引業法や民法など、幅広い分野から出題されます。問題が広範囲でそこそこ難しい上に、受験資格の制限も無いことから、合格率は例年16~17%ぐらいを推移する難関試験と言われています。
<参考>宅建の合格率は?どれくらいの点数で合格できる? -通勤講座

宅建業(宅地建物取引業)とは?

f:id:London-airp:20181024110651j:plain
(出典:うかる!マンガ 宅建士入門 2018年度版(160頁)より)

宅地建物取引業(たくちたてものとりひきぎょう)とは、主として土地・建物等の売買・交換・賃貸の仲介や、分譲住宅の販売代理等を行う事業のこと。この事業を行うためには宅地建物取引業法で定める免許が必要となるほか、営業や広告、契約等の際には同法に基づく規制を受ける。多額の資本を必要としないことから小規模の会社が多く存在する。
宅地建物取引業 - Wikipediaより引用)

 宅建業者の主な業務は上のマンガ内の赤字にもあるように、①宅地建物の自ら売買及び交換、宅地建物の売買・交換・賃貸借の②代理または③媒介です。

 ①については、一般人が保有する資産としての土地や建物を売買するためにいちいち免許が必要という訳ではありません。事業として継続して不動産の売買を行う場合は宅建業として登録が必要ということです。マンションの分譲販売などがこれに当たります。

 代理媒介は、共に他人の売買や貸借をお手伝いする行為です。媒介は契約相手方を探して紹介するだけの仲介業務であり、代理は契約まで行う業務です。代理はその分媒介に比べて、貰える報酬の制限が2倍になります。

 また、誤解されがちですがマンションや寮の貸借は宅建業ではありません
 宅建業を行うためには『宅地建物取引業免許』が必要です。

宅建士(宅地建物取引士)とは?

f:id:London-airp:20181024111746j:plain
(出典:うかる!マンガ 宅建士入門 2018年度版(167頁))

宅地建物取引士(たくちたてものとりひきし)とは、宅地建物取引業法に基づき定められている国家資格者であり、宅地建物取引業者(一般にいう不動産会社)が行う、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の取引に対して、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実に法に定める事務(重要事項の説明等)を行う、不動産取引法務の専門家である。
宅地建物取引士 - Wikipediaより引用)

 宅建業を行う上で必要になるのが、宅地建物取引士です。『宅地建物取引業免許』と『宅地建物取引士証』は実は違うものなのですが、ここでは細かい説明は省きます。宅建士にしか出来ない業務として、①重要事項(宅建業法35条)の説明と②35条書面(重要事項説明書)の交付と記名押印、③37条書面への記名押印(交付や説明は無資格者でも良い)があります。

 このため、契約事務を行う事務所の宅建業に従事する職員の5人に1人以上は宅建士が必要となります。もし宅建士の数が不足したら2週間以内に補充する必要があります。

地面師事件と宅建業との関連は?

f:id:London-airp:20181024163344j:plain
 関連と言うより、元々はこういう手合いを取り締まるために制定されたのが『宅地建物取引業』です
 詐欺グループが扮していたのは、土地の売主売主から買い取って積水ハウスに転売する宅建業者です。

 意外に思われるかも知れませんが、他人の不動産を売買することも宅建業の『他人物売買』として認めれている行為です。
 ここで媒介代理をしないのか? という疑問をお持ちの方もいらっしゃることと思います。

 媒介や代理をした際の宅建業者が受け取れる報酬額は制限されているため、多少の経費が掛かっても転売の形を取る業者が多いようです。
 
 さらにエンドユーザーである積水ハウスが宅建業者であったため、他人物売買に制限が掛からず、詐欺師たちの望むスピーディーな取引展開になったのでしょう。エンドユーザーが業者でもない只の一般人なら、他人物売買の際に制限が掛かりもっと時間も要したと思います。

お待たせしました。解説です。

※注意書き
・本文中の解答と解説はあくまで個人で行ったものであり、信憑性は一切ありません。
・法解釈には私の未熟ゆえの錯誤、あるいは単に阿呆なための勘違いが含まれている可能性があります。
・あえて嘘を書いたつもりはありませんが、信じ込み過ぎないようにお願いします。

<参考>資格の学校TAC『平成30年度 宅地建物取引士試験 解答速報』(リンク先のPDFが解答速報です。)

問3「『試験受かったらこの建物あげるよ』と言った後に、自分で放火するAくん」


f:id:London-airp:20181024113413j:plain

【問 3】 AとBの間で、5か月後に実施される試験(以下この問において「本件試験」という。)にBが合格したときにはA所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した(以下この問において「本件約定」という。)。この場合における次の記述のうち、民放の規定及び判例によれば、誤っているものはそれか。
1 本件約定は、停止条件付贈与契約である。

2 本件約定の後、Aの放火により甲建物が滅失し、その後にBが本件試験に合格した場合、AはBに対して損害賠償責任を負う。

3 Bは、本件試験に合格したときは、本件約定の時点にさかのぼって甲建物の所有権を獲得する。

4 本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件試験に合格しても、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。
(平成30年度 問題より引用)

 合格したら建物(たぶん空き家)1棟を貰えるほどの誉(ほまれ)ある試験。ハンター試験かな?
 しかし、何を思ったか、Aくんは約束の甲建物に自ら放火し、甲建物を滅却してしてしまった・・・。 初っ端から犯罪係数の高そうなAの登場です。

 誤りを探す問題ですが、ポイントは選択肢1にも含まれる停止条件付贈与契約(民放127条1項)です。

第127条
① 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
② 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
③ 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
民法総則 第127条【条件が成就した場合の効果】 | 司法書士合格クレアールより引用)

 この問の冒頭におけるAとBとの間では、契約自体は成立していますが効力の発生が停止されている状態です。停止条件とは、結果発生が不確定な一定の事実や条件が成就するまで、契約における法律効果の発生を停止させることです。この条件を持つ贈与契約が、停止条件付贈与契約となります。

 この問では、「Bが本件試験に合格したら、A所有の甲建物をBに贈与する」という贈与契約を締結しています。
 将来の結果発生が不確定な事実が「Bの試験合格」であり、それが贈与の効果発生(甲建物の所有権移転)を停止させる条件になっています。

 よって選択肢1は〇。選択肢2もOKです。選択肢3については、127条3項の文面から迷うかも知れませんが、合格しただけでは、初めから所有権を有しているとは見なされません。よって間違いは選択肢3です。宅建試験にしては民法の細かい部分に踏み込んだ問題です。

 選択肢4は意思能力の話です。『意思能力がない=成年後見人』とお思いの方もいるかと思いますが、ちょっと違います。wikiからの引用によると、『意思能力がない』状態とは成年後見人よりもっと広い意味合いを持ちそうです。

概説
意思能力は行為能力とは異なり実定法上に具体化されているものではない。(中略)

意思能力の有無は、問題となる意思表示や法律行為ごとに個別に判断される。一般的には、10歳未満の幼児や泥酔者、重い精神病や認知症にある者には、意思能力がないとされる。
意思能力 - Wikipediaより引用。)

 いずれにしろ、意思能力や行為能力が無いものが行う契約は、それ自体が取り消しになります。取り消しは無効とは違います。

 これが心裡留保(真意でないことを知りながら意思表示すること)ならば、原則として契約は有効になります。
 Aが「(本当はそんなつもり無いけど)試験に受かったら建物をあげるよ!」と言った場合は、例えそれが荒唐無稽な内容でも実現可能な約束ならば、口約束でも有効になってしまいます。しかし、Bが悪意(そんなこと冗談だと分かっている)場合は、契約が無効になります。

 例えどんな形であれ、一度他人に譲渡すると約束した建物を自ら燃やすAくんの行動はかなりヤバいのです。契約の不履行になってしまいます。

問5「隣人Bさんの家を勝手に修理し、その代金を全額請求するAくん」

f:id:London-airp:20181024113721j:plain

【問 5】Aは、隣人Bの留守中に台風が接近して、屋根の一部が壊れていたB宅に甚大な被害が生じる差し迫ったおそれがあったため、Bからの依頼なくB宅の屋根を修理した。この場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aは、Bに対して、特段の事情が無い限り、B宅の屋根を修理したことについて報酬を請求することができない。

2 Aは、Bからの請求があったときには、いつでも、本件事務処理の状況をBに報告しなければいけない。

3 Aは、B宅の屋根を善良な管理者の注意をもって修理しなければならない。

4 AによるB宅の屋根の修理が、Bの意思に反することなく行われた場合、AはBに対し、Aが支出した有益な費用全額の償還を請求することができる。
(平成30年度 問題より引用)

 本当にこれ宅建の問題か・・・? 修理費用の請求ですと、借家における造作買取請求権がまず頭に浮かびましたが、状況は大分違うようです。


※造作買取請求権
 賃借人が賃貸人の同意を得て賃借物(建物)に付加した造作(畳や建具など)は、契約終了時に賃貸人に買い取ってもらえる決まり。特約で排除も可能。

 この問題のキモは事務管理です。

概説
事務管理と法制度

法律上の義務がない者が好意的に他人のためにその事務の管理を始めることで事務管理は開始される。(中略)

民法上の事務管理
事務管理の当事者間の関係について、民法は相互扶助の観点から、管理者が管理を始めた場合には原則として事務の性質に従って最も本人の利益になる方法で本人が管理できるようになるまで管理を継続する義務(700条本文)などを定め、その一方で本人に対しては管理者に対して有益な費用を償還する義務(702条1項)などを定めている。
事務管理 - Wikipediaより引用)

 要約すると、契約行為ではないけれど他人のために行う好意的な行為というところでしょうか。

 地方では入居者のいない空き家が増えている(井上陽水の歌にあるフレーズみたい)ので、その世相を反映した問題なのかも知れません。
 行かなくちゃ 君の家を修理しに行かなくちゃ 屋根がない(台風来ているのに)
という状況で、事務管理はAさんの行動を法的にも正当化する最後の砦です。何とかしてAさんの行動を正当化しないとAさんが漏れなく不法侵入の罪にも問われかねません。

 ところで、スマホやケータイのある世の中なのに、なぜAは修理する前にBに一言連絡を入れなかったのでしょうか?
a).Aは、隣人とはいえ特に知り合いでもないBの連絡先は知らなかった。
b).連絡や許可を貰ってから行動する余裕もないほど、差し迫った状況だった。
 ここでは勝手にb)と解釈して説明を続けます。

 選択肢1と選択肢4は矛盾していると思われるかも知れませんが、よく読むとどちらも正しい答えです。選択肢1には特段の事情が無い限りと書かれています。差し迫った状況でもないのに、闇雲に修理して勝手に修繕費を請求されたら困ります。

 選択肢4はTwitterで話題になった箇所です。意外かも知れませんが、この選択肢は正しいのです。問題文をよく読むと、『Bの意思に反することなく行われた場合』と書いてあります。ここでまず、「選択肢1と4が矛盾している訳ではないのだな」、という事に気付きます。

 そして上記の事務管理の説明にある<<その一方で本人に対しては管理者に対して有益な費用を償還する義務(702条1項)>>により、Aさんは費用全額の請求をすることが出来ます

 選択肢2の報告義務は民法699条「管理者の通知義務」のことかと。よって正しい。

 選択肢3の「善良な管理者の注意」とは善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)のことです。

《「善良な管理者の注意義務」の略》業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと。注意義務を怠り、履行遅滞・不完全履行・履行不能などに至る場合は民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となる。
[補説]民法第644条に「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」とある。
善管注意義務(ゼンカンチュウイギム)とは - コトバンクより引用)

 要約すると、専門業者はモノや資産を扱う際にはそれなりの注意管理が期待されるよ、ということです。
 台風が接近しているような差し迫った状況で、このような専門的な注意管理までAさんに求めるのは酷かと思われます。よって誤った選択肢は3です。

 問3の事例と違って、この問のAさんは実はそこまでサイコパスではなかったのですね。

問40「電話での勧誘を断られ、何を思ったか直接自宅を訪問するアスペぎみのAくん」

f:id:London-airp:20181024113738j:plain

【問 40】宅地建物取引業者Aが行う業務に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定に反するものはいくつあるか。
ア Aは、自ら売主として、建物の売買契約を締結するに際し、買主が手付金を持ち合わせていなかったため手付金の分割払いを提案し、買主はこれに応じた。

イ Aは、建物の販売に際し、勧誘の相手方から値引きの要求があったため、広告に表示した販売価格から100万円値引きすることを告げて勧誘し、売買契約を締結した。

ウ Aは、土地の売買の媒介に際し重要事項の説明の前に、宅地建物取引士ではないAの従業員をして媒介の相手方に対し、当該土地の交通等の利便の状況について説明させた。

エ Aは、投資用マンションの販売に際し、電話で勧誘を行ったところ、勧誘の相手方から「購入の意思がないので二度と電話をかけないように」と言われたことから、電話での勧誘を諦め、当該相手方の自宅を訪問して勧誘した。
(平成30年度 問題より引用)

 投資用マンションの電話勧誘なんて懐かしい話ですね。職場にその手の営業電話がかかってくると、いつも偉そうにしている上司がやたらビビって電話に出たがらなかったのを思い出します。

 結論から言うと、規定に反するものはアとエの2つです。
 
 手付金とは契約が成立した証として買主や借主が業者(売主、貸主)に渡す頭金のようなものです。履行着手前であれば、買主は手付を放棄することで、売主は手付金の倍額を返還することで契約解除が出来ます。
 手付金は買主からの貸付けや分割払いが禁止されており、これらを業者側から提案するだけで(成約せずとも)宅建業法違反となります。

 エについては「電話がダメ」と言われたので「自宅訪問は良い」と解釈してしまったのでしょうか? もちろんダメです。
 ただし、この問題のAくんも、好きで訪問勧誘したとは言い切れません。

 頭ではイケナイと知りつつ、パワハラやノルマが頭に過ぎり、こういう行動に至った可能性もあります。
 そういった意味では、この問題は現在の日本におけるブラック会社の闇を表現しているのかも知れません。

 最後はAくんではなく、Aくんの職場がサイコパスということでした。

まとめ

 ここまで素人のクソ長い上に説明調の文章を読んでくださり、ありがとうございます。 

 跳ばして読んだ方のために要約すると、問3は疑いようのないサイコパス問40は本人ではなく職場がサイコパスの可能性あり問5はサイコパスに見せかけて実は聖人だったという内容です。
 3者のサイコパス度数を某アニメみたく犯罪係数で表すと、『犯罪係数:問3 > 問40 >> 問5』というところでしょうか。問3のAくんは『PSYCHO-PASS』の世界だと、下手したら執行対象に為りかねません。ドミネーターが変形しするでしょう。

 おそらく皆さんは、問5の「人の家を勝手に修理して修繕費を請求」が限定的な状況とはいえ、合法だというのが意外だったのではないでしょうか?

アニメ『 PSYCHO-PASS サイコパス』は観るなら1stシーズンの方がおススメ